【神戸市北区の不動産と相続】誰にでもわかる!法定相続人・基礎控除・債務控除の超基本
- 石田敦也
- 6月6日
- 読了時間: 6分

相続税を支払う方は、実は全体の約8.8%に過ぎません。
この数字を聞くと、「うちには関係ない」と感じる方も多いでしょう。しかし、それは半分正しく、半分誤っています。
なぜなら、「相続税」と「相続」は全く別の概念だからです。
たとえ相続税がかからなくても、遺産分割の手続きや遺産の分け方を知っておくことは非常に重要です。
遺産を巡るトラブルは、残念ながら少なくありません。円満な相続を実現するためにも、知っておくべき重要なポイントを3つご紹介します。
1. 法定相続人とは?
法定相続人とは、民法によって定められた、亡くなられた方(被相続人)の財産を相続できる人のことです。
遺言書がない場合、この法定相続人全員で遺産分割の話し合い(遺産分割協議)を行い、財産を分けていくことになります。
また、法定相続人には、遺産を分ける際の目安となる「法定相続分」という割合も定められています。
◆法定相続人の優先順位
法定相続人には明確な優先順位があります。上位の順位に該当する方がいれば、下位の順位の方は相続人にはなりません。
常に法定相続人となる人:亡くなられた方の配偶者
第1順位:亡くなられた方の子
第2順位:亡くなられた方の父母(子がいない場合)
第3順位:亡くなられた方の兄弟姉妹(子も父母もいない場合)
例: 亡くなられた方に配偶者や子がいる場合、兄弟姉妹は法定相続人にはなりません。
◆代表的な法定相続分のパターン
相続人の組み合わせによって法定相続分は変わりますが、代表的なパターンを見てみましょう。
配偶者と子がいる場合(例:妻と長男・長女の3人)
配偶者:遺産の1/2
子(全員で):遺産の1/2(子の人数で均等に分割)
具体例: 遺産が1,000万円の場合
妻:500万円
長男:250万円
長女:250万円
配偶者と兄弟姉妹がいる場合(例:妻と弟の2人、子や父母はいない)
配偶者:遺産の3/4
兄弟姉妹(全員で):遺産の1/4(兄弟姉妹の人数で均等に分割)
具体例: 遺産が1,000万円の場合
妻:750万円
弟:250万円
◆代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは?
もし、本来相続人になるはずだった人が、すでに亡くなっている場合、その人の子が代わりに相続人となることがあります。これを「代襲相続」と言います。
代襲相続の対象になる人:
子:亡くなっている子の代わりに、その子(被相続人から見て孫)が相続人になります。孫がすでに亡くなっていれば、その孫の子(被相続人から見てひ孫)となります。
兄弟姉妹:亡くなっている兄弟姉妹の代わりに、その子(被相続人から見て甥・姪)が相続人になります。ただし、甥・姪が亡くなっている場合は、それより下の世代への代襲相続は起こりません。
例: 夫が亡くなり、妻と長男が相続人となるはずが、長男が夫より先に亡くなっていた場合。この時、長男に子(夫から見て孫)がいれば、その孫が長男の代わりに相続人となります。
2. 相続税の基礎控除とは?
相続税を支払う人が少ないのは、税務署が一定の金額までは相続税を非課税としてくれているからです。これを「基礎控除」と言います。
この基礎控除額を超える財産がなければ、相続税は発生しません。
◆基礎控除額の計算式
具体的な基礎控除額は、以下の計算式で求められます。
基礎控除額 = 3,000万円 + (法定相続人の数 × 600万円)

計算例
例として、夫が亡くなり、法定相続人が妻、長男、長女の3人の場合を考えてみましょう。
法定相続人の数:3人
基礎控除額 = 3,000万円 + (3人 × 600万円) = 3,000万円 + 1,800万円 = 4,800万円
つまり、夫の遺産の合計額が4,800万円までなら、相続税はかからないということになります。ご自身の家族構成で一度計算してみると、相続税がかかるかどうか、おおよその目安がわかるでしょう。
3. 債務控除とは?
相続税を計算する際、亡くなった方が残した借金や未払いの税金など、マイナスの財産(債務)がある場合、その分を遺産の総額から差し引くことができます。これが「債務控除」です。
遺産はプラスの財産(預貯金、不動産など)とマイナスの財産(借金、未払い金など)の両方で構成されます。
相続税は、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた「正味の遺産額」に対してかかります。債務控除をすることで、相続税の負担を減らすことができる場合があります。
◆債務控除の対象となるもの
一般的に、以下のようなものが債務控除の対象となります。
借入金:住宅ローン、自動車ローン、カードローンなど
未払金:電気代、ガス代、水道代、家賃などの未払い分
未払いの税金:所得税、住民税、固定資産税など、亡くなった時点までに発生していた税金
葬式費用:通夜・告別式の費用、火葬費用、お布施、戒名料など(香典返しや墓地の購入費用などは対象外です)
その他:預かり敷金・連帯債務も対象となります。
【Q&A】知っておきたい相続の疑問
Q1. 相続税がかからない場合でも、相続手続きは必要ですか?
A1. はい、必要です。相続税がかからなくても、亡くなった方の預貯金の解約、不動産の名義変更(相続登記)、車の名義変更など、様々な相続手続きが必要です。これらの手続きを放置すると、後々トラブルの原因となることがあります。特に不動産がある場合は、登記の義務化も進んでいるため、速やかな対応が求められます。
Q2. 遺言書がない場合、遺産はどのように分割するのですか?
A2. 遺言書がない場合は、法定相続人全員で話し合い、「遺産分割協議書」を作成して遺産を分割します。この話し合いがまとまらない場合、調停や審判といった家庭裁判所での手続きが必要になることもあります。円滑な話し合いのために、先述の法定相続分が遺産を分ける目安となります。
Q3. 認知症になると不動産の売却が難しくなるというのは本当ですか?
A3. はい、本当です。認知症が進行し、ご自身の意思能力が低下すると、不動産の売却などの法律行為ができなくなります。ご家族が代わりに売却しようとしても、本人の同意なしには原則としてできません。そのため、将来を見据え、元気なうちに家族で話し合い、売却や「相続時精算課税制度」を利用した生前贈与で子に名義を移しておくなどの対策を検討することが重要です。神戸市北区でも、こうしたご相談が増えています。
4. まとめ
「相続税を払わなくてもいい家族だから、相続は関係ない」というのは大きな間違いです。
むしろ、いかに円満に遺産を分けるかという「遺産分割」こそが重要な問題となります。
話し合いで決めるのが難しい場合も多いため、法定相続人と法定相続分、そして債務控除をきちんと理解しておくことは、余計な争いを避ける上で非常に役立ちます。
また、高齢化が進む現代において、認知症対策は避けては通れない重要な課題です。特に不動産を所有されている場合は、元気なうちにご家族で相談し、自宅の売却や贈与などを検討されることを強くお勧めします。
神戸市北区を中心に、相続税がかからないケースでの遺産分割や、認知症対策としての不動産売却でお困りでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。専門家として、皆様に寄り添い、最適な解決策をご提案させていただきます。
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