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【神戸市北区】実家の不動産を売却し、介護した長男の嫁に特別寄与料を支払った事例

  • 執筆者の写真: 石田敦也
    石田敦也
  • 9月5日
  • 読了時間: 3分

更新日:9月6日


介護

長男の嫁に特別寄与料500万円を支払った実家売却ケース


結論

相続税がかからない家庭でも、不動産の遺産分割で大切なのは「どう分けるか」だけではありません。ときには「介護を一生懸命してくれた人」に感謝を形にすることが、家族の心をつなぐ最善の方法になります。


2019年に新設された「特別寄与料制度」は、従来の「寄与分」では認められなかったケースにも対応しています。そのため、相続人ではない長男の嫁のような人でも、その貢献が正当に評価される可能性が出てきました。今回は、実家を売却し、その代金から長男の嫁に特別寄与料500万円を支払った事例をご紹介します。



介護を担ったのは「長男の嫁」


神戸市北区のとあるご家庭。父が亡くなったあと、母の介護を一手に担ったのは「長男の嫁」でした。5年間にわたり、毎日の食事の世話や病院の送迎、夜間の見守りまで、ほとんど無償で支えてくれたのです。


兄弟たちもその努力を知っていましたが、仕事や家庭の事情で同じようにはできませんでした。だからこそ、相続の話し合いの場で「嫁に報いたい」という思いが自然に出てきたのです。



特別寄与料という制度


特別寄与料とは、相続人以外の親族が介護や看護などで故人に貢献した場合、その労力を金銭で報いることができる制度です。2019年の民法改正で導入され、相続人以外でも請求できる点が大きな特徴です。


金額は一律に決まるものではなく、

  • 介護の内容や期間

  • 経済的価値の算定

  • 相続人同士の合意

によって変わります。ここで用いられるのが裁量割合という考え方です。



裁量割合の考え方


介護を担った人は多くの場合、専門の介護士や看護師ではありません。そのため算定の目安として「介護報酬相当額」に 0.5〜0.8(または0.9)程度の割合を乗じる のが一般的です。専門家のフルタイム介護と同等には評価しないものの、労力や精神的負担を考慮して妥当な水準に調整する、というイメージです。



500万円の根拠


このご家庭では、介護の経済的価値を「日当5,000円」で試算しました。1日5,000円 × 月20日稼働 → 月10万円。年間にすると120万円、5年間で合計600万円になります。

ここに裁量割合を考慮し、8割相当=約500万円を目安に兄弟で合意しました。合理性と温かさの両方を兼ね備えた結論だったのです。



実家を売却して現金化


問題は「現金をどう捻出するか」でした。預金はわずかで、とても500万円をすぐに用意できる状況ではありません。

そこで出てきた解決策が「実家の売却」です。相続した家を現金化し、その一部を寄与料として嫁に渡す。残りは兄弟で分ける。これにより、不動産という分けにくい財産が、きれいに整理されたのです。



ありがとうで終わる相続へ


多くの相続は「もめごと」になりがちですが、このケースは違いました。介護を担った人に報いる制度を使い、実家を売却して感謝を形にしたことで、家族全員が納得。最後は「ありがとう」で相続を締めくくることができました。



まとめ


  • 相続税ゼロでも「遺産分割」は避けられない

  • 長男の嫁のような“相続人以外”でも、特別寄与料を受け取れる

  • 金額は 介護報酬相当額 × 裁量割合(0.5〜0.8) で目安を出す

  • 不動産を売却して現金化することで、フェアに分けやすい


相続は「争族」ではなく「感謝」で終わらせることができます。もしご家庭でも「介護を頑張った人に報いたい」と思うなら、不動産の売却と特別寄与料の活用を検討してみてください。


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