top of page

「法律は守られていた。でも納得感が足りなかった 貸付用不動産の評価見直しをどう受け止めるべきか」

  • 執筆者の写真: 石田敦也
    石田敦也
  • 1月10日
  • 読了時間: 3分
相続対策・賃貸経営

令和8年度与党税制改正大綱で、「貸付用不動産の評価方法の見直し」が打ち出されました。相続直前に取得した賃貸不動産や、不動産小口化商品を対象とした改正です。

このニュースに対して、「不動産の節税が封じられた」「また規制が強化された」といった声も聞かれますが、私は少し違う視点でこの改正を見ています。



■ 法律は「違反」ではなかった


まず、はっきりさせておきたいことがあります。

今回問題視された相続対策の多くは、当時の法律や評価ルールに照らせば、違法ではありませんでした。

  • 路線価に基づく評価

  • 借家権割合の控除

  • 借入を含めた財産評価

これらは、すべて制度として認められていたものです。

つまり、「脱税」や「違法行為」が横行していたわけではありません。ただし、極端に節税目的が前面に出た一部の悪質なケースについては、税務署も黙っていたわけではなく、実際に否認や更正処分といった“伝家の宝刀”を抜いて対応してきた事例もありました。



■ それでも残った「不公平感」


一方で、多くの人が心のどこかで感じていたのも事実です。

  • 何億円もの資産を持つ家庭が

  • 相続の直前に

  • 賃貸物件を購入し

  • 多額の借入を組み

  • 結果として相続税がほぼゼロになる

この構図に対して、「本当にそれでいいのだろうか」という感情が生まれたのは、自然なことだと思います。

ここにあったのは、違法性ではなく、納得感の問題 でした。



■ 法律と社会は、必ずしも同じスピードで動かない


法律や税制は、本来、

  • 安定性を重視し

  • 簡単には変えない


という性格を持っています。

しかし近年は、


  • 不動産の金融商品化

  • 小口化商品の拡大

  • 借入を組み合わせた高度なスキーム

  • ITによる急速な情報拡散


など、制度が想定していなかった使われ方が、一気に広がりました。

時代の変化のスピードに、制度のアップデートが追いついていなかったそれが今回の背景だと感じます。



■ 今回の改正は「線の引き直し」


今回の評価見直しは、

  • 不動産投資そのものを否定するものではありません

  • 長期保有の賃貸経営を否定するものでもありません


狙いは明確で、相続等の直前に行われる、過度に節税目的に偏った使い方 に限定して、線を引き直したものです。

特に、


  • 相続・贈与前5年以内に取得した貸付用不動産

  • 不動産小口化商品

に対象を絞っている点からも、「全体を潰す規制」ではないことが分かります。



■ 少し遅かった、という評価も正直ある


率直に言えば、「もう少し早く対応できなかったのか」という思いもあります。

制度が追いつくまでの間に、


  • 節税スキームが一般化し

  • 一部では過剰な営業も行われ

  • 不動産全体への不信感が広がった


面は否定できません。

それでも、遡及課税をせず、適用時期を明確にし、影響範囲を限定した今回の改正は、現実的でバランスの取れた是正 だと評価できます。



■ 業界側も、反省とアップデートが必要


今回の改正は、不動産業者、銀行、税理士といった専門家側にも、静かな問いを投げかけているように思います。


「法律上問題なければ、それでいいのか」「お客さんにとって、本当に納得できる説明をしていたか」

これからは、


  • 合法かどうか

  • 節税になるかどうか

だけでなく、

社会的な納得感があるかどうかまで含めて説明できる姿勢が求められます。



■ まとめ


今回の貸付用不動産の評価見直しは、不動産を否定する改正ではありません。

法律は守られていた。しかし、社会の納得感が追いついていなかった。

そのズレを是正し、制度を現実に合わせてアップデートした、そう受け止めるのが一番自然だと思います。


時代の変化が早い今だからこそ、税制も、そして私たち業界の姿勢も、スピード感を持って進化していく必要があるのではないでしょうか。

コメント


bottom of page