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関西賃貸の未来へ──「上げる」ではなく「保つ」ための家賃メンテナンスという考え方

  • 執筆者の写真: 石田敦也
    石田敦也
  • 11月8日
  • 読了時間: 4分

CPI連動賃料


関西の賃貸市場は、これまで「更新なし・更新料なし」という独自の文化で発展してきました。

契約は自動更新、借主は長く住み、大家も安定した収益を得る。それが関西らしい、穏やかで信頼関係に基づいた賃貸スタイルでした。


ところが今、社会全体を覆う急激な物価上昇によって、そのバランスが静かに崩れ始めています。ガス・電気・保険・修繕費・人件費――あらゆるコストが上がる中で、家賃だけが取り残されている。



📉 家賃だけ“昭和価格”のまま残る現実


たとえば東京では、2年ごとに更新契約があり、そのタイミングで家賃の見直しができます。一方、関西は更新料がなく、契約が自動で続くため、10年、20年と同じ賃料で住み続けるケースも珍しくありません。


この構造が、長い間「大家にも入居者にも都合がよかった」んです。なぜなら、物件は新築時に高めの賃料で貸し出され、時間とともに多少古くなっても、家賃を据え置き更新料なしで長期入居が続く。空室リスクが少なく、安定していた。


ところが、いまや物価は年々上昇。それに伴い、修繕費や材料費も高騰。「換気扇の交換ですら、以前の1.5倍になった」という声も多い。にもかかわらず、家賃だけが10年前のまま。

結果、オーナーの実質収益は年々目減りしています。



⚖️ 「家賃を上げる」ではなく「家賃を保つ」という発想


ここで登場するのが、CPI(消費者物価指数)連動型家賃という新しい考え方です。これは、国が発表する物価変動率(CPI)を基準に、2年ごとなどの一定期間ごとに家賃を自動的に見直す仕組み。


「物価が上がれば、家賃も少し上がる」「物価が下がれば、家賃も少し下がる」

つまり、上げるための仕組みではなく、保つための仕組みです。

これなら借主にとってもフェアで、「値上げされた」ではなく「時代に合わせて調整された」と感じられます。



🧾 関西型に合う“特約”の形


関西には更新契約がないため、この「見直しの仕組み」を作るには契約書の特約条項を活用します。


📋 特約例:

【賃料改訂特約】本契約は自動更新とするが、契約開始日を基準として2年ごとに、総務省発表の消費者物価指数(CPI)の変動率に基づき、賃料を改訂するものとする。賃料の改定幅は、前回改定時点の賃料を基準に、上限・下限いずれも±3%を限度とする。

このように、「プラマイ3%」を限度とする設計にすれば、毎年少しずつ積み重なる物価上昇にも対応でき、借主にとってもいきなりの大幅改定にはならない安心感があります。



💬 借主にも伝わる“フェアな説明”


この仕組みを導入する際に大切なのは「伝え方」です。「値上げではなく、経済に合わせてお互いが守られる仕組み」というニュアンスを伝えること。


「物価が変動しても、お互いに不公平がないように、2年ごとに少しだけ見直すルールです。上がることも下がることもあります。」

この一言が、借主の安心につながります。実際、ヨーロッパではこの方式が一般的で、「公正な仕組み」として長く定着しています。



📈 “上げる仕組み”ではなく“信頼を保つ仕組み”


この特約は、オーナーにとってもリスクヘッジになります。長期入居者が多い関西では、賃料を改定する機会が極端に少ない。結果として、築年数が経っても経営数字が固定化してしまう。CPI連動型を導入することで、自然な形で「時代に合わせたメンテナンス」ができる。


「値上げを交渉する」ではなく、「ルールに基づいて調整する」という流れを作れば、関係を壊さずに経営を安定化できます。


🌱 未来の関西賃貸は、“見直す文化”を持つことが強みになる


これからの賃貸経営は、「安定=固定」ではなく「安定=調整」の時代。物価や社会の変化に合わせて柔軟にメンテナンスできる仕組みを持つ大家が、結果的に長く信頼されます。


関西は、更新料という文化がないぶん、自分たちで「見直しの文化」を作れるチャンスがある。


「上げる勇気」ではなく、「保つ仕組み」。それがこれからの“信頼で続く賃貸経営”の鍵になる。


📘 まとめ


  • 関西では更新がないため、家賃見直しの機会が失われている。

  • CPI(消費者物価指数)連動型の特約を設けることで、公平で透明な家賃調整が可能になる。

  • 借主にとっても「納得感」と「安心感」が生まれ、長期安定の信頼経営へつながる。


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