大家さんも入居者も、実は知らない― 賃貸仲介の現場と、広告料が上がらざるを得ない本当の理由 ―
- 石田敦也

- 1月17日
- 読了時間: 4分

最近、大家さん向けのブログやSNSで「広告料が年々上がってきている」という声を見かけることが増えました。
広告料は、正式な報酬として法律に明確に定義されたものではなく、実務上は「業務受託料」や「販売促進費」といった名目で扱われる、いわゆるグレーゾーンの存在です。
この点については、業界に身を置く立場として、正直に認めなければなりません。
ただし、その背景には、大家さんや入居者の多くが知らない現実があることも、ぜひ知っていただきたいのです。
■ 賃貸仲介は「成約しなければ、収入ゼロ」の仕事
賃貸仲介の仕事は、完全な成果報酬型です。
問い合わせ対応
物件資料の準備
鍵の手配
現地での内覧案内
条件交渉や質問対応
これらを何件こなしても、契約に至らなければ、仲介業者の収入はゼロです。
一方で、
ガソリン代
コインパーキング代
人件費
ネット広告費
といった経費は、契約の有無に関係なく確実に発生します。
この構造は、外から見る以上に厳しいものです。
■ ネット時代が生んだ「見えない赤字」
インターネットとポータルサイトの普及により、賃貸物件への問い合わせは、誰でも簡単にできるようになりました。
これは入居者にとっては大きなメリットです。しかし同時に、現場ではこんな変化が起きています。
今すぐ借りる予定はない
参考として何件か見ておきたい
予算や時期がまだ未定
こうした「情報収集段階」の内覧が、以前と比べて明らかに増えました。
経験豊富な営業担当であれば、「この方は、近々には契約しないだろう」と分かります。それでも、
クレームを避けたい
SNSでの書き込みが怖い
といった理由から 、断れずに案内を続けるケースが多いのが実情です。
結果として、時間とコストをかけても、収入にならない仕事が積み上がっていきます。
■ 広告料が上がるのは「欲張り」ではなく「構造の問題」
こうした背景を知らなければ、広告料の値上がりは、単なる「業者側の都合」に見えるかもしれません。
しかし実際には、
無駄な内覧の増加
成約率の低下
固定費の上昇
という構造的な問題が、仲介業者の収益を圧迫しています。
広告料の上昇は、「もっと儲けたいから」ではなく、ビジネスとして成り立たせるための苦肉の策という側面があるのも事実です。
■ だからこそ、テクノロジーで解決すべき
ただし、現場が苦しいからといって、その負担を大家さんや入居者に押し付けるのは、本来あるべき姿ではありません。
ここで必要なのは、根性論ではなく、仕組みの進化です。
AIやVR、遠隔案内といったテクノロジーを活用すれば、
借りる側は、自分に合わない物件を見に行かなくて済む、情報収集だけであればVRで
仲介業者は、赤字になる案内を減らせる
大家さんは、無駄な広告費を抑えられる
という、全員にとって健全な流れが生まれます。
■ VR・遠隔案内は「手抜き」ではない
「現地を見ないと不安」そう感じる方も多いでしょう。
しかし、
360度VR
動画内覧
オンラインでの質疑応答
を活用すれば、物件の8割以上は事前に判断可能です。
実際に現地へ行くのは、「本気で検討する物件だけ」「最終確認の一回だけ」
これが当たり前になれば、無駄な移動や案内は大きく減ります。
■ 仲介の価値は「案内」から「判断支援」へ
これからの賃貸仲介の価値は、
何件案内したかではなく
どれだけ納得のいく判断を支援できたか
に移っていきます。
AIで条件を整理し、VRで事前確認を行い、本当に必要な人にだけ、現地案内をする。
この流れが定着すれば、
広告料に過度に依存しない
無理な営業をしない
誰も消耗しない
賃貸市場に近づいていくはずです。
■ 最後に
広告料が高いか、安いか。その議論の前に、なぜ、そうならざるを得ない構造になっているのかを、一度立ち止まって考えてみてほしいと思います。
AI、VR、遠隔案内。これらのテクノロジーは、人を切るためのものではありません。
人を疲弊させないための道具です。
大家さんも、入居者も、仲介業者も、誰かが我慢する市場ではなく、みんなが納得できる賃貸市場へ。
今は、その転換点に立っているのだと思います。






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