高台の住宅地でも水は来る――内水浸水のある物件を買う前に、必ず確かめること

【結論】 内水浸水の履歴がある物件は、「買ってはいけない物件」ではありません。浸水が0.5mくらい、数年に1回という実態なら、床の高さを確保した建物で十分に付き合えるリスクです。 ただしそれが言えるのは、ハザードマップを見て、売主と近所の人に実際の状況を確かめた人だけです。 |

内水氾濫は「川のそば」だけの話ではない
内水氾濫とは、短時間の大雨で下水道や側溝が雨を流しきれなくなり、道路や宅地に水があふれる現象です。川の堤防が切れる「洪水」とは別物で、川から離れた住宅地でも、坂の多い高台でも起きます。
西宮市は2026年2月に内水ハザードマップを公開しました。1時間147mmという想定し得る最大規模の雨で、どこがどのくらい浸かるかを色分けしたものです。ただ、そのマップ自身に「浸水が想定されていない場所でも発生することがある」と注意書きがあります。色が付いていないから安心、とは市も言っていないのです。

私が仲介した「水が来る家」
これまでの仲介で、内水による浸水履歴のある物件を何度か扱いました。阪神間の山手の、人気のある住宅地です。浸水はだいたい0.5mくらい、数年に1回。私はお客様に伝え、重要事項説明書にも記載しました。
印象に残っているのは、どの物件も「分かったうえで建ててある」ことです。土地を買って新築されたお客様は、基礎を高くして家を建てました。中古戸建も、前の持ち主が最初から基礎を上げて建てていました。地元の人は、水が来ることを知っているのです。
大阪で仲介した土地に新築された家の設計図を見ると、よく分かります。敷地は前面道路よりわずかに低く、道路との間には既設の水路が通っています。その家は、1階の床を一般的な住宅より高く設計していました。0.5mの水が来ても、床下で止まるようにするためです。
もう一つ、こうした地域では市が雨水管の増強などの対策工事を組んでいることがあります。役所が予算をつけて工事をするということは、裏を返せば浸水の実績があるということです。対策が済めば頻度は下がりますが、いつ完成するのかまで確かめてください。
売主は隠したい。重説だけでは足りない
はっきり書きます。浸水履歴は、売主が一番言いたくないことの一つです。値段に響くと分かっているからです。
2020年8月から、宅建業者には水害ハザードマップ上の所在地を重要事項説明で伝える義務ができました。ただし義務は「マップのどこにあるか」までです。実際に何年に一度、何cmまで水が来たのかは、住んでいる売主と近所の人しか知りません。業者も、売主が言わなければ知りようがないのです。
売主が知っていて黙っていた場合、契約書に「責任を負わない」という特約があっても、売主は責任を免れません(民法572条)。しかし、買主にとって大事なのは後で責任を問えることではなく、買う前に知ることです。住み始めてから水が来ても、家は元に戻りません。
買う前にやる3つのこと
1.内水ハザードマップを確認する
洪水のマップとは別にあります。自治体によっては、過去に浸水した回数を色分けした「浸水履歴マップ」や、対策工事の予定を示したマップも公開しています。
2.売主に具体的に聞く
「浸水はありましたか」ではなく、「いつ、どこまで、何cmまで来ましたか。車は大丈夫でしたか」と聞いてください。物件状況報告書(売主が物件の状態を書く告知書)の記載と食い違いがないかも確認します。
3.近所の人に聞き、現地を見る
隣の家の基礎の高さ、玄関前の止水板や土のうの置き場所、敷地が道路より低くないか、そばに水路がないか。これは現地に立てば分かります。近所の方に「大雨のとき、この辺は水が出ますか」と一言聞けば、たいてい正直に教えてくれます。あわせて市の下水道の担当課に、対策工事の有無と完了予定を聞いておくと確実です。
買うと決めたら
新築なら、設計の段階で床の高さを上げておくことです。後からはできません。中古なら、床の高さが想定の浸水深より上にあるかを測ってください。一番被害に遭いやすいのは建物より車です。駐車場の位置と高さも見ておきましょう。火災保険は水災補償を外さないこと。浸水のある地域で水災を外すのは、保険を掛ける意味の半分を捨てるのと同じです。
よくある質問(Q&A)
Q.ハザードマップで色が付いていなければ安心ですか?
A.安心ではありません。マップは想定であり、市自身が想定外の場所でも起きると書いています。最後は売主と近所の人への聞き取りで確かめてください。
Q.売主が浸水を言わなかったら、どうなりますか?
A.知っていて告げなかった場合、免責の特約があっても売主は責任を問われます。ただし立証は簡単ではありません。買う前に聞くのが一番の対策です。
Q.内水浸水の履歴がある物件は、値段が下がりますか?
A.下がることが多いです。浸水の頻度と深さが分かっていて、床の高さで対処できる物件なら、相場より安く良い住宅地に住める選択肢にもなります。
Q.市が対策工事をしていれば、もう大丈夫ですか?
A.頻度は下がりますが、ゼロにはなりません。工事の完了時期と、完了後にどの程度の雨まで対応できるのかを担当課に確認してください。
石田敦也/ダイヤモンドコンサルティング
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・相続診断士
対応エリア:神戸市・芦屋市・西宮市



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