空室対策は、募集より「いま住んでいる人」から ― 退去を一件減らすほうが、空室を一件埋めるより簡単です

▶ この記事の内容を、約1分のショート動画にしました。
空室対策と聞くと、多くの方は募集のことを思い浮かべます。写真を撮り直す、家賃を見直す、広告料を上乗せする、ネット無料をつける。
インターネットで「空室対策」と調べても、出てくるのはほとんどが、入居者を「どう集めるか」の話です。
もちろん募集の工夫は大切です。ただ、30年近く賃貸管理の現場にいて思うのは、空室は退去があって初めて生まれるということです。
いま住んでいる方が住み続けてくれれば、そもそも募集をする必要がありません。
この記事では、募集の前にある、もう一つの空室対策についてお話しします。結論から言えば、退去を一件減らすほうが、空室を一件埋めるより、ずっと簡単で確実です。
退去が一件出ると、いくら消えるのか
まず、退去が一件出たときの損失を、ざっと数字にしてみます。
家賃6万円の部屋で、退去から次の入居まで3か月かかったとします(あくまで仮の試算です)。
空室期間の家賃:3か月分で18万円
原状回復の大家さん負担分:仮に10万円
仲介会社への広告料:家賃1か月分で6万円
早く決めるためのフリーレント:1か月分で6万円
合計すると40万円。家賃の半年分以上が、退去一件で消えてしまう計算です。
金額は物件や時期によって変わりますが、退去が出るたびにこれだけの費用と手間がかかることは、大家さんなら実感があると思います。
逆に言えば、入居者さんが1年長く住んでくれるだけで、この出費をまるごと先に延ばせます。入居中の満足に手間をかけることは、最も費用対効果の高い空室対策と言えます。
退去の本当の理由は「家賃」ではないことが多い
退去の理由として届くのは、転勤、結婚、家を買った、といったものがほとんどです。
けれども、入居者さんと話していると、その裏に別の理由が隠れていることに気づきます。
頼んだ修理を、なかなかしてもらえなかった
連絡しても返事が遅かった
隣の音や共用部の使い方の問題を、放っておかれた
こうした小さな不満が積み重なると、更新の時期や、近くに似た条件の部屋を見つけたときに、「それなら引っ越そうか」という気持ちになります。
反対に、「ここは何かあってもすぐ対応してくれる」と感じている方は、家賃が相場より少し高くても、なかなか出ていきません。
引っ越しには入居者さんにも費用と手間がかかります。不満さえなければ、人は基本的に住み続けたいものなのです。
入居者の満足を上げるために、できること
特別な設備投資をしなくても、できることはたくさんあります。当社が日々の管理で大切にしていることを挙げます。
▼ 不具合への対応は、とにかく早く
エアコンが効かない、水が漏れる、といった連絡には、その日のうちに動くのが基本です。すぐに直せなくても、「いつ業者が伺えるか」を早く伝えるだけで、入居者さんの受け止め方はまったく違います。
▼ 共用部は「見ればわかる手入れ」を
廊下の電球切れ、ゴミ置き場の散らかり、伸びた雑草。入居者さんは毎日そこを通ります。共用部の状態は、そのまま「この建物は大切にされているか」というメッセージになります。
▼ 問い合わせには、まず返事をする
答えがすぐに出ないことでも、「確認して○日までにご連絡します」と一言返す。それだけで、放っておかれたという不満は生まれにくくなります。
▼ 更新のときに、一言聞いてみる
更新の書類を送るときに、「お部屋で気になっているところはありませんか」と添えておくと、言い出せずにいた小さな不具合が見つかることがあります。退去の芽を、早いうちに摘むことができます。
▼ 長く住んでくれている方には、小さなお返しを
古くなったエアコンや水栓、照明などを、退去を待たずに入居中に新しくする。どうせ退去後に交換するものなら、住んでいる方のために先に替えたほうが喜ばれ、結果として長く住んでもらえます。
満足が高い物件は、募集でも強くなる
入居者の満足を上げることは、退去を減らすだけではありません。
手入れの行き届いた共用部や、きちんと整えられた設備は、内見に来た方の目にもそのまま映ります。長く住んでいる人が多い建物には落ち着いた雰囲気があり、それ自体が次の入居者を呼ぶ力になります。
つまり、入居中の満足を追いかけることは、結果として募集の強さにもつながるのです。
おわりに
退去をすべて防ぐことはできません。しかし、修理の遅れや管理への不満が原因で起きる退去なら、日々の対応によって減らせる可能性があります。
空室対策というと、次の入居者を探すことに目が向きがちです。けれども、まず考えたいのは、今住んでいる方が安心して住み続けられる管理ができているか、ということです。



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