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「高齢者だから断る」は思考停止です|ケアマネジャーがついている入居者は、大家のリスクが最も小さい

執筆者の写真: 石田敦也
石田敦也
5 分前
読了時間: 7分
ケアマネジャーがついている入居者は、大家のリスクが最も小さい

高齢の単身者からの入居申込を、年齢だけを見て断っている大家さんがいます。はっきり言いますが、それは思考停止です。


先に立場を明かしておきます。私は「高齢者を全部受けろ」とは言いません。断るケースもあります。


・孤独死が起きたときの原状回復

・残置物を誰の権限で片付けるのか

・判断能力が落ちると更新も解約もできなくなること


こうした現実を分かったうえで、申込者ごとに中身を見て判断しています。全部断るのも、全部受けるのも、どちらも同じ思考停止です。


介護認定を受けてケアマネジャーがついている高齢入居者は、大家にとってリスクが最も小さい入居者のひとつです。


若い単身者より小さい、と言っていいと思っています。



エアコンが壊れたとき、連絡をくれたのはケアマネジャーさんでした


うちの管理物件にも、現にそのケースの入居者が二人います。週のほとんど、部屋にヘルパーさんや訪問の方が入っていて、物件を巡回しているときに私も何度もお会いしています。


象徴的だったのが、エアコンの故障です。連絡をくれたのはケアマネジャーさんでした。交換の段取りも、そのままケアマネジャーさんとやりとりして決まりました。


これがどれだけ楽か、大家さんなら分かると思います。高齢の単身入居者で本来いちばん怖いのは、設備が壊れても誰にも言わず、我慢したまま真夏に倒れられることです。


ところが専門職が週に何度も部屋に入っていると、故障はその日のうちに伝わってきます。しかも日程調整の相手は、平日の昼間に確実に電話が通じる人です。


若い単身者の「夜しか電話に出られない」「何往復しても日程が決まらない」より、はるかに早く終わります。


そしてこの見守りは介護保険の仕組みで回っているので、大家の負担はゼロ円です。


月数百円の見守りセンサーが検知しようとしていることを、資格を持った専門職が、目で見て判断してくれている。これ以上の安否確認はありません。


年齢で断っている大家さんは、この入居者を取り逃がしています。



大家が本当に怖がっているものの正体


ケアマネジャーがついた状態が安全なら、危ないのはその手前です。


介護認定を受けていない。家族は遠方か、いない。本人は「まだ大丈夫」と言う。この期間が、長い人では数年続きます。


この数年で、家賃の入金リズムが変わります。金額ではなくリズムです。毎月25日だった人が月末になり、催促して入り、また遅れる。


郵便物がポストに溜まり、ゴミ出しの曜日が合わなくなり、火の不始末が出ます。


大家にとっての本当の詰みは、このあとです。判断能力が失われると、本人は有効な契約行為ができなくなります。更新もできず、解約もできません。


ここで、動いてくれる家族がいる人なら話は早い。実務では、資力のあるご家族が半ば強引にでも施設へ連れ出し、荷物も片付けて部屋は空きます。大家が困ることはほとんどありません。


問題は、その家族がいない場合です。


明け渡しを進める相手が誰もいなくなります。では成年後見を立てればいい、という話になりますが——


成年後見の申立ては、大家にはできません。


申立てができるのは、本人・配偶者・四親等内の親族・検察官、そして市町村長。貸主は入っていません。


道は一本、地域包括支援センター経由で市町村長申立てを動かすことだけ。そして数か月かかります。

その間、部屋は明け渡されず、交渉相手もおらず、大家は何も決められません。


高齢者を断る大家さんが恐れているものの正体は、これです。孤独死だけではありません。この宙ぶらりんの期間です。


この詰み方は、高齢者を断っても避けられません。


いま45歳の入居者も、20年住めば65歳です。長く持つつもりなら、いつかどこかの部屋で必ず遭遇します。年齢で入口を閉めても、時間が勝手に連れてきます。


そしてケアマネジャーがついている入居者は、この宙ぶらりんの期間をすでに抜けた人です。


つながる先があり、状態を記録している専門職がいて、悪化したときの次の行き先も段取りされている。断る相手を、完全に間違えています。



私が実際に見ている条件は、二つだけです


① 近くの親族(できれば子供)が保証人になること

② 保証会社に加入できること


この二つを満たしていれば、年齢は見ません。

近くに子供がいれば、判断能力が落ちてきたときに動く人がいます。先ほどの宙ぶらりんの期間が、そもそも発生しません。遠方だと間に合わないことがあるので、「近く」が条件です。


保証会社は、滞納が立て替えられること以上に意味があります。保証会社からの滞納通知が、異変の第一報として働くからです。家賃のリズムが崩れたことを、こちらが気づく前に教えてくれます。


そして、すでにケアマネジャーがついている方、介護認定の申請中の方。これは別枠で、私は積極的に入れています。


逆に、はっきり書いておきます。


近くに動いてくれる親族がいない方は、私も受けていません。


大家が独りで背負える範囲を超えるからです。誰かが住まいを確保しなければならないのは事実ですが、それは私有財産である賃貸住宅と、その所有者個人が背負う話ではありません。行政が引き受けるべき領域です。


2025年10月施行の改正住宅セーフティネット法で、居住支援法人が入居中の見守りから残置物処理まで受任する仕組みが動き始めました。そちらの枠組みに乗せるべき話で、大家さんに追加のリスクを求める話ではありません。


私が言いたいのは、近くに子供がいて、保証会社にも通る高齢者を、年齢だけで断っている大家さんが多すぎるということです。


断るべき相手と、断ってはいけない相手を分けていない。それを思考停止だと言っています。



異変に気づいたら、どこに電話するか


神戸市なら「あんしんすこやかセンター」です。地域包括支援センターの神戸市での愛称で、概ね中学校区に1か所、市内76か所。相談は無料で、大家さんや管理会社からの相談も受けてくれます。西宮市・芦屋市にも同じ機能の窓口があります。


ここが介護認定への入口であり、先ほどの市町村長申立ても動かせます。つまり、宙ぶらりんの期間を短くする手段は、電話一本から始まります。


日々の兆候は、郵便物の溜まり方、ゴミ出しの乱れ、家賃の遅れ方。定期清掃で人が現場を見ていることが、結局いちばん精度の高いセンサーです。



正直に書いておきます


これでリスクがゼロになるわけではありません。手間も増えます。売却が近い物件の大家さんには、そもそも勧めません。


ただ、長く持つなら必ず遭遇する話です。年齢で入口を閉めても、時間が連れてきます。


だから、断る力ではなく「選別する力」を持つしかありません。



よくある質問


Q.ケアマネジャーがついているか、どう確認すればいいですか。

A.入居申込の面談で、介護認定の有無とケアマネジャーの連絡先を聞くだけです。ついている方は、たいてい本人もご家族も隠しません。むしろ「伝えたら断られる」と思って黙っている方が多いので、こちらから聞く姿勢を見せたほうが、良い入居者が集まります。


Q.緊急連絡先を親族にしてもらえば十分では?

A.不十分です。名前を書いてもらうだけでは、いざというとき動くとは限りません。「保証人になる」が実質的な条件です。


Q.火の不始末が心配です。

A.ガスコンロをIHかSiセンサー付きに替えるのが、いちばん安く効きます。失火責任法の関係で、重過失がなければ入居者に請求もできません。燃えにくい部屋にしておくことが、結果としていちばん安い保険です。


Q.保証会社の審査に通らない場合は?

A.私はお断りしています。保証会社が取れないリスクを、大家さんが個人で取る理由はありません。その場合は、居住支援法人が関与する枠組みでの入居を検討すべきケースです。



この記事を書いた人


石田敦也 / 有限会社ダイヤモンドコンサルティング

宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・相続診断士

神戸市・芦屋市・西宮市で、賃貸管理・不動産売却・相続のご相談を承っています。「この申込、受けていいものか」で迷われたときは、お気軽にご相談ください。

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