ワンルームで半同棲?「同居人が増える」問題と、最初から人数を制限しておくという管理の考え方
- 石田敦也

- 21 時間前
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当社では、月1回の建物巡回をしています。ワンルームの物件で多いのですが、
部屋からカップルで出入りしている光景によく出くわします。本当にたまに遊びに来ているだけのこともあれば、どう見ても二人で暮らし始めているケースもあります。わかりやすいのは洗濯物で、一人暮らしのはずの部屋のベランダに、いつの間にか二人分の洗濯物が干されている。そういうときは、ああ住んでいるな、と気づきます。
借主さん本人にしてみれば、「彼女(彼氏)が泊まりに来ているだけ」という感覚なのだと思います。実際、泊まりそのものは何の問題もありません。ただ、それが常態化して「もう一人ここで暮らしている」という状態に近づいてくると、話が変わってきます。契約はあくまで一人で交わしているわけですから、同居人が増えるのであれば、まずは通知をしてもらわないといけません。
結論を先に言うと、賃貸では同居人が増える場合は貸主への通知が必要です。国土交通省の賃貸住宅標準契約書では「通知」のみで足りるとされていますが、私が使っている兵庫県宅地建物取引業協会の契約書では「借主は事前に書面で申し出て、貸主の書面による承諾を得なければならない」と一歩踏み込んだ定めになっています。
許可のない同居だけで契約を解除するのは法的に難しいのが現実ですが、騒音や水道料の問題が絡むため、私は最初から人数を制限して契約するようにしています。ワンルームは一人まで、という具合です。
契約書によって「通知だけ」か「承諾が必要」かが違う
ここは意外と知られていない部分なので、整理しておきます。
国土交通省の標準契約書では、同居人が増える場合は「貸主に通知しなければならない」と定められています。これはあくまで通知のみで、貸主の承諾までは必要ないと理解されています。つまり、知らせてくれさえすればよい、という建て付けです。
一方、私が普段使っている兵庫県宅建協会の契約書は、同居人を追加する場合「事前に書面で申し出て、貸主の書面による承諾を得る」ことを求めています。承諾という一段重いハードルが入っているわけです。
貸主さんの立場で考えると、通知だけで誰でも入居できてしまうのは、正直なところ少し怖い面もあります。とはいえ、今のご時世であまり細かいことを言って退去されても困る。このあたりは本当に難しいところで、契約書のどちらの建て付けを採用しているかで、打てる手が変わってきます。
法的には「許可なしの同居」だけで解除は難しい
ここは大家さんに誤解してほしくない点です。
標準契約書の記載や判例の流れから言っても、「許可なく同居人を入れた」という一事だけをもって契約を解除するのは、実務上かなり難しいと考えておいたほうがいいです。同居人が増えただけでは、信頼関係を破壊するほどの重大な違反とまでは評価されにくいからです。
ですから「無断で人を入れたから出ていってもらう」という発想で動くと、まず通りません。私が重視しているのは、解除できるかどうかではなく、そもそもトラブルを起こさせない管理の組み立てのほうです。
大家・管理会社が本当に困るのは「騒音」と「水道料」
実務で一番頭が痛いのは、契約違反かどうかという法律論ではありません。人数が増えた結果として起きる、次の二つです。
ひとつは騒音などで近隣に迷惑がかかること。一人暮らし向けの部屋に二人三人と増えれば、生活音も来客も増え、隣戸からの苦情につながります。
もうひとつは、水道料が固定の物件で赤字が出ること。人数が増えれば当然使用量も増えますから、定額制だと貸主側がそのまま負担をかぶることになります。
だからこそ、通知だけは必ずしてもらわないと困ります。ここは譲れない一線です。見て見ぬふりはしません。
同居人が増えたときの、私の対応の順番
実際に「どうやら同居人が増えているな」と気づいたとき、私は次の順番で動いています。いきなり強く出るのではなく、段階を踏むのがコツです。
ステップ①
事実確認と本人確認書類の請求です。借主さんに対して、「同居される方が増える、あるいは頻繁に滞在される場合は、通知・申請が必要です。生活マナー遵守の観点から、同居される方の本人確認書類、運転免許証のコピーなどを提出してください」とお願いします。書類を求めること自体が、「この物件はきちんと管理されている」という静かなプレッシャーになります。借主さんの側にも、いい加減なことはできないという緊張感が生まれます。
ステップ②
水道料が固定金額の契約であれば、増額の交渉に入ります。人数が増えれば使用量も増えるわけですから、それを理由に、たとえば月額二千円アップといった条件を提示します。理不尽な値上げではなく、増えた負担に見合った調整だと説明すれば、たいていは納得していただけます。
ステップ③
誓約書を出してもらいます。「隣戸に迷惑をかけない」「生活マナーを遵守する」といった内容を一枚にまとめ、契約者ご本人と、新しく加わる同居人の双方から署名のうえ提出してもらう形です。書面に残しておくことで、後々トラブルが起きたときの拠り所にもなりますし、何より双方に「約束した」という意識が芽生えます。
このスリーステップを踏めば、頭ごなしに追い出すこともなく、かといって野放しにすることもなく、現実的な落としどころに着地できます。
だから私は「最初から人数を制限」して契約する
ここまでが、増えてしまった後の対応です。ただ、後追いの対応はどうしても消耗します。そこで私が行き着いたのが、契約の入口で人数を決めておくという方法です。
具体的には、ワンルームの居住は一人まで、契約段階で人数の上限を明記しておきます。ワンルームに三人も四人も住まれては、騒音にしても水道料にしても、さすがに管理が立ち行かなくなるからです。
トラブルが起きてから「契約違反だ」と争うより、最初に線を引いておくほうが、貸主にとっても借主にとっても結局はやさしい。これは長く管理をやってきて出した、ひとつの答えです。
ワンルームのカップルをめぐる小さな違和感も、突き詰めれば「契約の入口をどう設計しておくか」という管理戦略の話に行き着く、というのが現場での実感です。



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