特別受益の計算例|兄のカードローン800万円と実家2000万円をどう分ける?
- 石田敦也

- 8月30日
- 読了時間: 3分
更新日:9月6日

相続でよく揉める原因のひとつが「特別受益(とくべつじゅえき)」です。
特別受益とは、共同相続人の中で、被相続人(亡くなった方)から生前に遺贈や多額の贈与を受けていた人がいる場合、その分を相続財産に持ち戻して(足し戻して)計算する民法の仕組みです。
公平に分けるためのルールですが、実際には兄弟間の不満やトラブルにつながりやすいのが現実です。
今回は「兄のカードローン返済を親が肩代わりしていた」という具体例をもとに、不動産売却とあわせてわかりやすく解説します。
事例紹介:実家2000万円と兄のカードローン800万円
親が生前、兄のカードローン返済を援助し、合計800万円を立て替えていました。その後、親が亡くなり、残された財産は「実家の不動産2000万円」だけです。相続人は兄と妹の二人でした。
ここで注意が必要なのは、生前に渡した800万円も相続財産にプラスして計算するという点です。これは特別受益という考え方で、一般の方にはあまり知られていませんが、相続の話し合いにおいては非常に重要なポイントになります。
特別受益の計算方法をステップで解説
ステップ1:相続財産に特別受益分を足す
まず、実家2000万円に、兄が受けた特別受益800万円を足します。
2000万円 + 800万円 = 2800万円
この2800万円が、相続の計算における「みなし相続財産」です。
ステップ2:法定相続分で分割する
次に、みなし相続財産2800万円を兄妹で2分の1ずつに分けます。
2800万円 ÷ 2 = 1400万円
この1400万円が、それぞれの「具体的相続分」になります。
ステップ3:差額を調整する
最後に、それぞれの具体的相続分から、すでに受け取った金額を引いて調整します。
兄の場合:1400万円(具体的相続分) - 800万円(特別受益) = 600万円
妹の場合:1400万円(具体的相続分) - 0円 = 1400万円
結果として、兄は600万円、妹は1400万円を最終的な相続分として受け取ります。
不動産しかない場合の対処法
今回の事例のように、現金がなく不動産しかない場合は、兄が家を相続して妹に現金を支払うのは現実的に難しいケースがほとんどです。
このような場合、公平に財産を分けるためには、不動産を売却して現金化する方法が最も一般的です。売却で得たお金を、それぞれの相続分に合わせて分けることで、トラブルを回避できます。
相続した実家を売却する際の税金
相続した実家を売却する際には、「相続空き家の3,000万円控除」という特例が使える場合があります。
これは、一定の要件を満たすことで、譲渡所得(売却益)から最大3,000万円まで控除できる制度です。適用できれば大きな節税効果が期待できますが、要件が細かく定められているため、詳細については税理士など専門家に確認することをおすすめします。
まとめ:特別受益の理解が円満な相続の第一歩
今回のケースでは、「生前に渡したお金も相続財産に加算して計算する」という特別受益の仕組みを理解することが重要です。この考え方を知らないと、「不公平だ」と感じてトラブルになることがよくあります。
現金のない相続では、不動産を売却して現金化することで初めて公平な分け方ができます。特別受益を正しく理解し、早めに不動産売却を検討することが、円満な相続への第一歩といえるでしょう。
不動産売却に関するご相談がありましたら、いつでもお気軽にお声がけください。







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