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室内死亡歴のあるマンション売却|契約直前で白紙になった実体験と相続登記の見落とし

  • 執筆者の写真: 石田敦也
    石田敦也
  • 2 分前
  • 読了時間: 6分
契約直前で白紙になった駅前マンション売却の話

不動産の謄本(登記簿)は、

物件の「履歴書」だ。


所有者の変遷をたどると、

時に思わぬ事実が浮かび上がってくる。


今回お話しするのは、

その謄本を読み込めなかった

僕自身の失敗談だ。


西宮市内、阪神沿線のある駅前に立つ

分譲マンション。


売却依頼から契約直前まで進んでいた案件が、

先輩からの一本の電話で崩れ落ちた。




オープンハウス当日、売主様が4時間ずっと室内にいた



好立地のため、マンション内に賃貸で入居している方もいると思い。

まずはオープンハウスを開催することにしました。

日時を決め、売主さんへ連絡。


当日、鍵を受け取りに行くと、なぜか売主さん本人も部屋について来られました。

そして驚いたのは、その後です。

オープンハウス開催中、およそ4時間。

売主様は一度も帰らず、ずっと室内にいたのです。


私は少し不思議に思いました。

「思い入れのある部屋なのかな」

「几帳面な方なのかもしれない」

その程度でした。

深く考えませんでした。

今振り返ると、この時点で感じた違和感から、

もっと推測すべきだったと思います。




駅前なのに反響が弱い。理由がわからなかった


結局、オープンハウスで見込み客はありませんでした。

その後もポータルサイト掲載やチラシ配布など販売活動を続けましたが、

思ったほど問い合わせは増えません。

駅前物件。

価格も高すぎない。

それなのに反響は鈍い。

正直、もう少し、問合せがあると思っていました。




申し込みが入り、契約目前まで進んだ


そんな中、知り合いの不動産会社の方から連絡がありました。

「息子用として購入したい」

現地確認後、正式に購入申込み。

価格交渉もまとまりました。


ここまで来れば、あとは契約準備です。

私は重要事項説明書や契約書作成のため、市役所や法務局で資料を取得し、

調査を進めました。

そして書類が完成し、契約日程調整に入ろうとした時でした。


買主さんから電話がありました。


「この登記、少し気になる」


買主さんはこう言いました。


「娘さんからお父さんへの相続で売却だよね?」


その瞬間、少し引っかかりました。

相続登記自体は珍しくありません。


ただ、

娘 → 父

という流れは一般的ではありません。


私は当時、

「若くして病気で亡くなられたのかもしれない」

その程度にしか考えていませんでした。


ところが先輩は、

「少し気になるから確認してくる」

と言い、管理人事務所へ確認。


すぐ、連絡がありました。

室内で亡くなられていた経緯があったようです。

事件性ではなく病気とのことでした。


その瞬間、オープンハウスの日のことが頭に浮かんだ。

売主さんが4時間、一度も部屋を離れなかった理由が、

ようやくわかった気がした。


近所の人が来て、室内での病死のことを

話されるのを防ぎたかったのだ。


縁起を気にする先輩は購入を断念。

契約は白紙になりました。




最大の失敗は売主ではなく、自分の調査不足だった


売主さんに確認すると、

同じ事実が確認された。


僕は率直に伝えた。


心理的瑕疵に該当する可能性が高いことは、

事前に一言言ってほしかった、と。


ただ、正直に言えば、

プロとしての最大の失敗は

僕自身の調査不足だ。


謄本を見た時点で

「娘から父への相続」という記載に

気づいていた。


にもかかわらず、

深く掘り下げなかった。


相続登記の背景には、

必ず「誰かが亡くなっている」

という事実がある。


それが病気なのか、事故なのか、

どこで亡くなったのか——

確認するのは仲介業者として

当然すべき調査だった。




隠すことで、不利になるのは売主さん自身


売主さんが室内での死亡を

伝えたくなかった気持ちは、

人間として理解できる。


不利なことは隠したい。

それは自然な心理だ。


ただ、仲介業者に伝えないことで、

最終的に不利になるのは

売主さん自身だ。


心理的瑕疵の告知を怠ったまま

契約が成立した場合、

後から発覚すれば

契約解除や損害賠償のリスクを負う。


「知っていて黙っていた」という事実は、

売主さんにとって

大きな法的リスクとなりえる。


正直に伝えることが、

売主さん自身を守ることにもなる。


このことは、仲介業者として

依頼者にきちんと伝えるべき

重要な視点だと、

この経験から改めて学んだ。




その後


この案件はキャンセルとなったが、

次に内見に来られた方への案内では、

室内での病死について丁寧に説明した。


最終的には西宮市内にお住まいの

ご夫婦が、事情を十分ご理解の上で

購入してくださった。


物件そのものは駅前の好立地で、

条件は悪くなかった。


正直に伝えることで、

理解して受け入れてくださる

買主さんは必ずいる。


この苦い経験があるから、

僕は謄本の裏まで考え売却理由を必ず確認し、

売主さんをリスクから回避することが出来ます。




■ Q&A


Q. 室内での死亡があった物件は、

  必ず告知しなければいけませんか?


A. 2021年に国土交通省が

「宅地建物取引業者による

 人の死の告知に関するガイドライン」を

 策定しました。


 病死・老衰など自然死は

 原則として告知不要とされていますが、

 自殺・他殺などは告知が必要です。

事故死については内容によって扱いが異なります


 ただし「原則」であり、

 個別の状況によって判断が変わる

 ケースもあります。



─────────────────────


Q. 病死の場合、告知しなくても

  法的には問題ないのですか?


A. 2021年に策定された国交省ガイドラインでは、

  老衰・持病による病死などの「自然死」は、

  自宅での死因の約9割を占める一般的なものとして、

  売買・賃貸借いずれの場合も

  原則として告知不要とされています。


  ただし、例外が2つあります。


  ひとつは、自然死であっても

  長期間放置されたことで

  特殊清掃や大規模リフォームが

  行われた場合は告知が必要です。


 もうひとつは、買主・借主から

  「何かありましたか?」と

  直接聞かれた場合は、

  死因や経過年数に関わらず、

  把握している事実を告げる義務があります。


  今回の案件のように

  「病死=告知不要」とは

  単純に割り切れない側面があります。


  気にする方が必ずいる以上、

  僕は法的義務の問題としてではなく、

  買主さんの「知る権利」への配慮として、

  丁寧に説明することを心がけています。


─────────────────────


Q. 謄本(登記簿)を見ただけで

  事故物件かどうかわかりますか?


A. 直接わかるわけではありませんが、

 「相続登記」の内容から

 死亡の背景を推察し、

 追加調査のきっかけにすることは

 できます。


 今回のように

 「親より先に子が亡くなっている」

 という記載は、

 何らかの事情を疑うシグナルに

 なりえます。









【執筆者】


石田敦也/ダイヤモンドコンサルティング

宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・相続診断士

対応エリア:神戸市・芦屋市・西宮市


神戸で長年、不動産売買・賃貸管理・相続相談に携わってきました。

このブログでは、現場で実際に起きた出来事をもとに、

大家さん・地主さん・相続資産をお持ちの方に向けて、

失敗を避けるための実務的な視点をお伝えしています。



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