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他人地に下水配管が通っていた|役所の調査だけでは見抜けない不動産取引の落とし穴

  • 執筆者の写真: 石田敦也
    石田敦也
  • 5月14日
  • 読了時間: 6分

神戸市北区鈴蘭台駅前|ダイヤモンドコンサルティング

不動産売却


他人地配管


■「地下室付きの家を建てたい」その夢が崩れた瞬間


Aさんは不動産業者を通じてある土地を購入しました。目的は明確で、地下室付きの一戸建てを建てること。設計図は頭の中にあり、ご家族で楽しみにしていました。


ところが契約後、衝撃の事実が判明します。購入した土地の地下には、お隣のBさんの家の下水配管が埋設されていたのです。地下を掘ることはできません。Aさんの計画は根本から崩れ、最終的に売買契約は解除されました。


この事案で問題とされたのは、不動産業者が配管調査を怠り、買主に説明しなかったことです。重要事項説明書には、その記載がありませんでした。


これは特殊なケースではありません。同じ構造のトラブルは、神戸市北区のように昔からの住宅地と新興分譲地が混在し、私道や雛壇造成地が多いエリアで、今後もあり得ることです。

■他人地の配管は「撤去させる」ことができない


なぜこれが厄介なのか。それは、他人の配管が法律で守られているからです。


下水道法第11条は、自分の敷地から下水を流すために隣の土地を通らせざるを得ない場合、他人の土地に排水設備を設置することを認めています。


(下水道法 第十一条)

「他人の土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは、他人の土地に排水設備を設置し、又は他人の設置した排水設備を使用することができる。この場合においては、他人の土地又は排水設備にとつて最も損害の少い場所又は箇所及び方法を選ばなければならない。」


土地には必ず高低差があります。下水は重力で流れますから、隣家のほうが高い位置にあれば、その下水を低い側の土地を通して本管まで導く以外に方法がないことが当然あります。だから法律は「受忍義務」として、土地所有者に我慢を求めているわけです。


つまり、買った土地に他人の配管が通っていることが後でわかっても、原則として「撤去してくれ」とは言えません。地下室は諦めるしかない。建物の位置や基礎の設計も大幅にやり直すしかない。だからこそ、買う前に知っているかどうかが決定的に重要なのです。


■なぜプロでも見落とすのか|「公道と私道」の境界線


不動産業者は、必ず役所で配管図を取得します。これは基本中の基本です。


ところが、ここに大きな落とし穴があります。役所が配管図を持っているのは、原則として公道部分だけということです。


一部の整備された私道では記録が残っていることもありますが、多くの私道、特に古い分譲地の中の私道では、配管図そのものが存在しないことが珍しくありません。


神戸市北区は、戦後の住宅開発と昭和後期のニュータウン開発が重なってできた街です。鈴蘭台や谷上といったエリアには、旧分譲地の中を細い私道が走り、その下に複雑に配管が埋設されているケースが多くあります。役所で「配管図がある」と言われても、それが本当に該当土地の配管網を網羅しているとは限らない。


ここを甘く見ると、冒頭のAさんのような事態を招きます。これは会社の規模の問題ではなく、「役所の図面を取って完了」と思考停止していないかの問題で、担当者の能力なのです。




■見えない地下を「推理」する|30年積み重ねてきた調査の手順


では役所に図面がないとき、どうやって地下を読むのか。正直に言って、これは経験がものを言う作業です。マニュアルだけで身につくものではありません。


私が必ずやることは、大きく4つあります。


1つ目は、現地の汚水桝とマンホールの位置をすべて確認すること。汚水桝は配管の通り道のヒントそのもので、配置パターンから流れの方向が読めます。私道にマンホールが一つもなければ、その時点で「ではこの土地の下水はどこを通って本管に出ているのか」という疑問が立ち上がる。Aさんの事例も、現地で私道を歩けば気づける程度の違和感が、最初からあったはずです。


2つ目は、売主さんへの聞き取り。長く住んでいる方は、過去の補修工事や近隣との配管の取り決めを記憶していることが少なくありません。書面に残っていない情報こそ、現場では決定的な手がかりになります。


3つ目は、既存建物がある場合の設計図書の確認。確認申請の図面、設備図、検査済証関係の書類に、配管経路の記録が残っていることがあります。古い物件ほど書類は散逸していますが、ご家族の押し入れの奥に保管されていることもある。これは探す価値が大きい。


4つ目は、隣接地の所有者への聞き込み。「お宅の下水はどちらから本管へ?」と尋ねるだけで、こちらの土地に他人地配管が通っている可能性が浮かび上がることがあります。


シンプルに言えば、コナン君のように現場で違和感を拾い続ける作業です。図面を取って事務所で完結する仕事ではない。現地に立って、自分の目で確認していく仕事です。




■相続で受け継いだ土地ほど、注意が必要


ここは特に強調しておきたい点です。


代々住んできた土地、親から相続したばかりの土地は、所有者ご自身も配管の経路を正確に把握していないことが多くあります。「昔から問題なく流れているから大丈夫」という認識のまま、いざ売却・建て替え・分割といった場面になって、初めて他人地配管の存在が露見する。


ダイヤモンドコンサルティングで相続不動産のご相談を受けるとき、登記や境界の話と並んで、こうした「見えない地下のリスク」を必ずチェックします。下水だけではなく、上水・ガス・古井戸も同じです。これらを売却前に整理しておくかどうかで、後の取引のトラブルの有無が決まります。


古い分譲地で隣家との境界に余裕がない、私道に面している、敷地内に複数の汚水桝がある、敷地の高さと隣地の高さに差がある——こうした特徴がある相続地は、配管調査を売却活動の前に済ませておくことをお勧めしています。




■会社の規模ではなく、現場で違和感を拾えるかどうか


最後にひとつだけ、業界の話をさせてください。


他人地配管のトラブルは、会社の規模や広告の派手さでは防げません。役所で配管図を取って終わりにする業者は、大手でも小規模でも一定数存在します。逆に、現地で何回でも汚水桝を見て行き、隣家のチャイムを鳴らして聞き込みをする業者は、看板の大きさとは関係なく存在します。


差がつくのは、現場での違和感を拾える経験です。30年以上この仕事を続けてきて、私はそう確信しています。


神戸市・芦屋市・西宮市で相続・売却・購入をご検討中で、土地の調査に不安をお持ちの方は、どうぞお気軽にご相談ください。地下に何があるかを推理することから、私たちの仕事は始まります。





この記事は、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・相続診断士のダイヤモンドコンサルティング 石田敦也が、神戸市北区での30年以上の実務経験をもとに執筆しました。


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