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重説の転記作業で夜遅くまで残業している宅建士へ。AIに『書き写し』を任せたら作成時間が半減した話

  • 執筆者の写真: 石田敦也
    石田敦也
  • 2 分前
  • 読了時間: 7分

重要事項説明書を作るモンドちゃん


結論から書きます。重要事項説明書の作成時間は、AIを使えば半分以下になります。


ただし「AIが重説を作ってくれる」のではありません。


◆資料から読み取れる事実を転記する作業だけをAIに渡す 

◆宅建士は判断と調査に時間を使う。


この分け方ができるかどうかが、分かれ目です。



■ 重説作成の時間は、どこに消えているのか


一件の重説を作るとき、実際に頭を使っているのは全体の何割でしょうか。


登記簿から所在・地番・地目・地積を書き写す。用途地域図を見て建蔽率と容積率を欄に入れる。配管図から口径を拾う。この手の転記は、判断がほとんど要りません。それでいて、写し間違いは事故に直結します。


▼ 神経は使うのに、頭は使っていない。ここに時間が消えています。


逆に、本当に専門性が要るのはどこか。


地区計画の有無を市に照会する。

擁壁の許可書類が残っているかを売主に確認する。

既存不適格かどうかを判断する。

買主に何をどう説明するかを決める。──ここは代わりが利きません。



■ 実際に試してみた


重要事項説明書


神戸市北区の中古戸建(木造2階建、昭和51年築)で、実際にやってみました。全宅連書式のエクセル様式に、次の資料を読み込ませます。


《渡した資料》登記事項証明書(土地・建物)/市の用途地域図/水道局の給配水閲覧図



配管図


この三点だけで、不動産の表示、登記記録の甲区・乙区、区域区分、用途地域、建蔽率、容積率、高度地区、高さ制限、飲用水の配管状況までが埋まりました。


給配水閲覧図からは、前面道路の配水管がHI管φ100(昭和48年3月布設)、引込みの取出口径20mm、メータ13mmまで読み取れています。


ここに道路台帳と市の調査回答、代金明細と契約書案が加われば、ほぼ完成まで届きます。所要時間は、資料が揃っている状態から数分です。



■ 図面を渡すときは「どこの物件か」を番号で伝える


ここで一つ、実際にやってみないと気づかないコツがあります。


水道局の給配水閲覧図は、周辺一帯の何十軒分もの建物と配管が一枚に描かれた図面です。渡すだけでは、どれが対象物件なのかAIには分かりません。


▼ だから「水道は◯◯◯◯◯◯」と建物番号で指定してあげる。


たったこれだけで、その建物から前面道路の配水管までを正しくたどり、取出口径とメータ口径を拾ってくれます。



■ 登記簿の読み取りは、むしろ人より正確だった


今回の物件は、相続や生前贈与で持分が細かく動いているケースでした。甲区を追うと、まず順位3番で共有者二名に4分の1ずつが移転し、


その後の順位4番で残りの持分がさらに4分の1ずつ移転しています。


▼ つまり現在の持分は、登記簿の記載を足し算しないと出てきません。


書いてある数字をそのまま書き写すと、4分の1のまま重説に載ってしまいます。


この足し算を、AIは正しくやりました。各2分の1と算出したうえで、根拠として「順位3番と順位4番の合算」と順位番号まで示してきます。


乙区も同様で、設定と抹消が入り混じった記載から抹消済みのものを外し、現在有効な担保権はないと整理していました。


驚いたのは、下線の意味を理解していたことです。


登記事項証明書では抹消された事項に下線が引かれますが、その説明は紙面の末尾に「*下線のあるものは抹消事項であることを示す」と一行あるだけです。


この約束事を踏まえたうえで、抵当権の設定記載がいくつも並ぶ中から生きているものだけを選び分けていました。登記簿を読み慣れていない担当者ほど見落とすところです。


順位番号を目で追いながら分数を足していく作業は、単調なうえに間違えると事故になります。


数字を積み上げる、抹消済みを除いて現在有効なものだけを拾う──こういう仕事は、正直なところ人間より機械のほうが確実です。


任せられるところは、思っているより広いのかもしれません。



■ それでもAIに任せてはいけない部分


今回、面白いことが起きました。登記簿を読んだ段階で「建蔽率オーバーの可能性がある」という指摘が出たのです。


敷地75㎡に建蔽率50%なら建築面積の上限は37㎡。1階36.49㎡に附属建物の車庫14.22㎡を足すと超えてしまう、と。


しかし実際の車庫は堀込み式でした。地階で地盤面上1m以下の部分は建築面積に算入されません(建築基準法施行令2条1項2号)。


この一言を伝えるまで、AIは誤った警告を出し続けていたわけです。


逆に言えば、現地を知っている人間が一言添えるだけで、判断は正しい方向に修正されます。


▼ AIは資料に書いてあることしか知りません。書いていないことを埋めるのが宅建士の仕事です。



■ 肝は「根拠一覧」を必ず作らせること


この運用で一番効くのが、重説本体とは別に「どのセルを、何を根拠に埋めたか」の一覧を同時に作らせることです。


《三色に分けておく》

記入済=根拠資料と読み取り内容を明記/要確認=判断が入った箇所、前提を置いた箇所/資料待ち=まだ空欄の項目と、必要な資料名


チェックする側は根拠を追いながら確認でき、空欄が残っている項目も一目で分かります。

AIの出力をそのまま信じるのではなく、根拠を並べさせて人が検証する。


この形なら、宅建業法35条の説明責任は宅建士の側にきちんと残ります。



■ 雛形はエクセル一択。理由はセル番地です


重説の雛形はエクセル・ワード・PDFの三種類が配布されていますが、この用途ではエクセルを選んでください。理由は単純で、転記位置をセル番地で一意に指定できるからです。


▼AIが「用途地域はQ160、建蔽率はZ168、容積率はAA177」

と決めて、何度作っても必ずそこに入ります。しかも書き込む前に「そのセルの中身が本当に想定どおりか」を確認できるので、様式が改訂されて行がずれた場合にも、間違った場所に書く前に気づけます。


チェック欄も「□」という文字がセルに入っているだけなので、「☑」に置き換えるだけで済みます。


ワードだと、この様式は表が何重にも入れ子になっていて「何番目の表の何行何列」という指定になるため、様式が少し変われば壊れます。PDFは入力欄が定義されたフォーム付きでない限り、文字を後から重ねる形になり、位置合わせが手作業になって精度も出ません。


▼ 原本はエクセルで管理し、お客様へ渡すPDFはそこから変換して作る。


これが一番きれいな形です。



■ 資料を全部そろえたら、どこまで届くのか


今回はあくまでテストで、渡したのは三点だけでした。では、普段の調査でそろえている資料を全部読ませたらどうなるか。


《そろえたい調査資料》確認申請書と確認済証/都市計画図/建築基準法の指定道路図/公私道判定/ハザードマップ/上下水道の配管図/大阪ガスの配管図/埋蔵文化財包蔵地の照会結果


ここまで渡したうえで、読み違いを直し、足りない資料を継ぎ足していけば、ほぼ完璧な重要事項説明書ができあがるはずです。少なくとも今回の手応えでは、そう感じています。


言い換えれば、重説作成のボトルネックは書く作業ではなく、資料をそろえる作業のほうに移ります。役所を回り、事業者に照会し、現地を見る。この部分は今までどおり人の仕事です。


▼ ただしそこで集めた資料は、集めた瞬間にほぼ書面になる。


そういう時代が来ています。



■ 始めるなら、どこから手をつけるか


最初の一件は、すでに完成している過去の重説で試してください。AIが埋めた内容と実際の記載を突き合わせれば、どこまで任せられて、どこからは自分で調べるべきかが具体的に分かります。




よくある質問


Q1.AIが作った重要事項説明書をそのまま交付してよいですか


いけません。35条書面の説明義務は宅地建物取引士にあり、記載内容の責任はAIに移りません。AIが作るのは下書きであり、役所調査の結果と現地確認を反映させ、宅建士が最終確認をしたものが重説です。


Q2.どの程度まで自動で埋まりますか


登記簿・用途地域図・配管図・道路台帳・代金明細・契約書案が揃っていれば、記載欄の7割から8割です。残りはハザードマップや地区計画などの役所調査、石綿調査や建物状況調査など売主への確認事項が中心になります。


Q3.個人情報の扱いはどうなりますか


登記簿には所有者の氏名と住所が載ります。どのAIサービスを使うか、入力した情報が学習に使われない設定になっているかは、事前に必ず確認してください。社内規程の整備が先です。





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