事故物件の空室対策と滞納者の生活再建。二つの難題を同時に解く実務の知恵
- 石田敦也

- 2 日前
- 読了時間: 5分

退去だけが答えではなかった賃貸管理の実例
以前、大阪で20戸と1階店舗のワンルームマンションを管理していた時の話です。
駅から近く、入退去の回転も比較的よい物件でした。空室が出ても埋まりやすく、管理としては大きな問題の少ない建物だったと思います。
ただ、一人だけ家賃滞納を続けている入居者がいました。
難波で飲食店勤務の若い男性です。
この入居者は、私が管理を引き継ぐ前から住んでいました。当時は、いわゆる「ゼロゼロ物件」が増え始めていた頃で、保証会社加入も今ほど一般的ではありません。
契約を確認すると、保証会社は未加入でした。
滞納は数か月。
電話をしても、
「来月まとめて払います」
「仕事が落ち着いたら払います」
滞納対応をされたことがある大家さんなら、一度は聞いたことがある言葉かもしれません。
私は何度も部屋を訪問しました。
オーナー同行で部屋を訪問したこともありました。
室内は、お弁当の空容器やジュースのペットボトルが積み重なり、ほぼゴミ屋敷の状態でした。
生活が崩れると、家賃だけでなく部屋の管理も崩れていく。
これは珍しいことではありません。
オーナーにも状況を説明し、場合によっては弁護士を入れて法的手続きを進める必要があると話しました。
ただ、オーナーは女性で比較的慎重な方でした。
「もう少し様子を見ましょう」
同じ階で起きた孤独死
そんな時、別の問題が起きます。
同じ階で、高齢の入居者が室内で孤独死をされました。
発見が遅れ、室内損傷は大きく、原状回復費用も高額になりました。
保証人への請求も十分な回収には至らず、オーナー負担が発生しました。
お坊さんにも来ていただき、室内を整えたうえで再募集の準備を進めました。
ただし、孤独死後の部屋です。
当時の状況や地域性も踏まえ、オーナーと相談した結果、賃料は相場の約50%程度まで下げて募集する方向で話がまとまっていました。
退去ではなく「住み替え」を考えた理由
その時、私は一つ考えました。
5か月近く滞納している男性の入居者に、この部屋へ住み替えてもらえないか。 もちろん、彼自身も同じ階の出来事を知ってはいましたが、管理会社としてそこを有耶無耶にはしません。
心理的瑕疵(孤独死)がある部屋であることを改めて正式に告知し、納得と同意を得た上で、契約書にうたいました。 同時に、「次に家賃が遅れたら、弁護士による法的手続き(退去)を行うことも明記しました。
一方、元の部屋のゴミ屋敷状態については、彼自身に可燃ごみと資源ごみの分別をさせ、自分の手で全て処分してもらいました。 空になった部屋は、通常のリフォームをして相場家賃で次の入居者が決まりました。
もちろん、これは全員に通用する方法ではありません。
滞納が続けば、最終的には法的手続きも必要になる。
オーナーにも説明し、了承を得たうえで進めました。
選択肢としては他にもありました。
弁護士へ依頼して明渡し請求
滞納を放置して様子を見る
強く退去交渉を進める
家賃負担を下げ、生活再建を優先する
私は最後を選びました。
この判断で優先したこと
この判断は情ではなく、オーナーの収益改善と損失圧縮を優先した結果でもありました。
事故歴のある部屋は空室期間が長引く可能性があり、賃料も下げざるを得ません。
一方で、滞納者が住んでいた部屋は、リフォーム後に通常賃料で募集できる見込みがありました。
管理会社として考えたのは、
長期滞納による損失拡大を防ぐこと
事故物件化した部屋の空室期間を短縮すること
通常募集できる部屋を早く市場へ戻すこと
最終的なオーナー収益を改善すること
でした。
賃貸管理では、人情だけでも契約だけでも解決できない場面があります。
結果としてどうなったか
この男性はしばらくして昼の仕事に転職しました。
収入が安定したようで、家賃も払えるようになりました。
滞納分を払い、最終的には引っ越ししていきました。
この経験で感じたこと
この経験で感じたのは、
賃貸管理は「払わない人を追い出す仕事」でも、「人助けの仕事」でもなく、
オーナーの損失を抑えながら、現実的な落としどころを探す仕事だということです。
滞納者対応では、退去が正解のこともあります。
早く法的対応した方が良いケースも多いです。
むしろ、そちらの方が一般的かもしれません。
ただ、現場では契約書だけでは整理できない事情が重なることがあります。
孤独死。保証会社なし。長期滞納。ゴミ屋敷。オーナーの意向。空室リスク。
管理会社は、その全部を同時に考えて判断しなければいけません。
最後に
今は保証会社加入が当たり前になり、状況はかなり変わりました。
それでも大家さんには知っておいてほしいと思います。
問題は一つずつ起こるとは限らない。そして、管理の仕事は”正論”だけでは回らないことがある。
【執筆者】
石田敦也/ダイヤモンドコンサルティング
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・相続診断士
対応エリア:神戸市・芦屋市・西宮市
神戸で長年、不動産売買・賃貸管理・相続相談に携わってきました。
このブログでは、現場で実際に起きた出来事をもとに、
大家さん・地主さん・相続資産をお持ちの方に向けて、
失敗を避けるための実務的な視点をお伝えしています。



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